ゲロ吐きそう

ゲロのように文字を吐いていきます

2022年 記念すべき1本目のゲーム 「SWAN SONG」

ハルリンです。あけましておめでとうございます。

 

2021年の振り返りもありますが,今年のプレイしたゲームも並行してご紹介いたします。

タイトルは「SWAN SONG(スワンソング)」。軽くネタバレがあります。大したネタバレでもない気がしなくもないですが。

 

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SWANSONG ヒロインの一人,あろえを写したタイトル

 

R18指定のいわば「エロゲー」というジャンルで,その中でもいろいろな種類がありますが,こちらは「シナリオメインのゲーム」です。かといって「泣きゲー」かといわれると,実際にプレイして感動した身としてはそれでも良い気がしますが,それは人にもよるんで,総合するならば「生きゲー」のような感じです。というのも,物語内で多くの人が亡くなり,多くの人の心を喪わせる展開がありながらも,登場人物たちは生きることを全うするからです。ここまで人の生きる姿を見せつけられるゲームもなかなかないだろうなという感じはします。それでも死にますが。でも,大事な何かというか「自分らしさ」のようなものはそこに残り,それはプレイヤーの私たちの中で「生きている」から,ここではそう呼ぶのがいい気がします。

「鬱ゲー」というのも私はこのゲームにおいては若干違うように思えます。確かに憂鬱にはなりますけど,生きていく上で起こりうる範囲の憂鬱さなので。終わった感覚はホラーゲームの「零」に近いような感じもありました。

全体的にはなんか胸がキュっとなるゲームでした。締め付けられる感触もありながら,綻ぶ瞬間もあって,あるキャラ同士の絡みはとても優しく,逞しく,キュっとなりました。

 

前回はデビルメイクライというアクションゲームについて書きましたが,こちらは「ノベルゲーム」です。といっても「弟切草」や「かまいたちの夜」のように多岐に渡るエンディングというわけではなく,基本的には一本道で,たまにある選択肢でバッドエンドに分岐したりしますが,意外とわかりやすくできていて,「あ,バッドエンドだな」って気づきますし,バッドエンドもすんなり到達してすぐにタイトルに戻れます。また,ゲームシステムで選択肢を戻ることもできたりするので,基本的には1つのエンディングに向かって物語は突き進んでいきます。で,2周目には1周目にはなかった選択肢が1つ登場し(これがまたわかりやすい),1周目とは異なる選択肢を進むようにすると,グッドエンドにたどり着けます。

 

こちらのゲームですが,ほんとにかる~く最初のストーリーを話しますと,

おそらく北海道か東北だと思われる雪の降り積もる都会で大地震が起こります。その震災の中で生き残った尼子司という男子大学生。彼は偉大な指揮者を父親に持ち,自らも音楽家としてピアノを演奏していたが,とある事故に遭って,その後遺症で右手が動かなくなります。そのせいで天才肌で傲慢な父親に見捨てられ,それでもピアノを弾き続け,彼なりのロジックを持って音楽と付き合っています。ですが,震災に見舞われ,生存者を探すため,民家に入ったところ,八坂あろえという少女に出逢い,その姉が瓦礫の下敷きになっている状況を目の当たりにします。姉はもう助からなく,少女も様子がおかしい。少女は重度の自閉スペクトラム症であり,他人とのコミュニケーションはコツがいるとのことがわかった。姉は「こんな世界に残すくらいなら妹を殺して」と言い,息絶えました。

 

雪が降り,凍死しそうになりながら街を歩き,避難所の学校を目指しますが,夜を明かすには厳しいと感じた司はあろえを連れて近くの教会に入ります。その教会はかろうじて地震を耐え,残っていたのです。そこには男性がおり,続いて大学生の女性二人と男性一人がたどり着きます。この6人が主軸となって,この物語は展開されていきます。

そして,地震で秩序が崩壊したことをいいことに人を犯し,殺す者たち。助け合ってコミュニティを作って生き残る者たち。宗教にすがる者たち,様々な生存者と出会いながら,彼らは生きます。

 

 

ここからは普通に自分とこのゲームの出会いや感想や解釈みたいな感じです。ネタバレはここから結構含まれると思います。もう素で話します。いや話す。

 

 

あー終わった。めっちゃきた。胸にずんときた。8~10時間ぐらいで読了したように思える。

視点が司含めて確か6人分あって,群像劇のようにチャプターに合わせて入れ替わるから,6人分の人生を体験したように思えた。というか,それだけの文章の緻密さなんだよな。最初の雪が降って自動販売機でココア飲むだけの描写にこんなに力入れてるのか!?ってなって,その妥協のなさに感動した。これは本当に「読み物」としても作ってるんだって。エロゲであることを謳いながら,ただ性的に消費させるわけではない,俺たちの本当に作りたいもの,見せたいもの,書きたいものをやってやるんだ!!!ってゲームだった。実はそういうのは初めてのプレイだったかもしれない。でもそういう作品が90~00年代に多く生まれて,10年代もそれなりに出てきたってことは割と知ってる。やったことはないけど。

実は本作はそういうのが好きな友人からこのゲームを渡され「インストールしてやってくれよ~」って言われて半年ぐらい経ってようやくやった感じなのだ。彼は大学で出会った友人だ。俺が小学校中学校高校と積み上げてきたゲーム歴って割と偏ってて,バイオハザードサイレントヒル,サイレン,ホラゲーばっかり。そしてこっそりやったエロゲ。ホラー映画は呪怨が大好き。グラセフは得意じゃないけど,フォールアウト3とかのオープンワールドは好き。ひぐらしのなく頃にで人生観変わった,そしてエロゲのシークレットゲームで人生観変わったみたいな人間だったから,周りとあまり趣味が合わなかった。教えてもハマってくれる人はまああまり居なかった。というより自分があまり流行ってるようなパンピー向けのものが好きじゃなかったからというのもあるからあまり薦められてもやれなかったものも多いからだ。薦められた「みつどもえ」は見た。でんじゃらすじーさん並に腹抱えて笑った記憶がある。

それは置いといて。

とまぁ大学に入ったときに彼と出会い,彼があまりにも自分がやってるゲームを知ってたりやってたり,好きだったり(バイオと呪怨はそうでもないとは言っていたが)で,色々話したりして,その中でこのゲームの話になり「やってみてぇな」って言ったら貸してくれたのだ。前回の記事を見てればわかると思うが,今年は異様にゲームをやっており,なかなか触れられなかった。だが,年末にやろうと思い,彼と話したら「それはいい。これは年末に合うゲームだハハハハハ」と言われ,プレイした。あぁ,そのとおりだった。

 

 

で,こっからゲームの話し。

 

クワガタさんという男,

彼は根暗で自分の容姿が他より劣ってることを気にするやつで,とてもネガティブな男だったが,正当防衛とはいえ人を殺す(殺しかける)経験や暴漢から女性を守ったことをきっかけに使命感に目覚め,人を率いることの快感に目覚め,こりゃまた暴虐の限りを尽くすんだ。彼は酷いヤツでもあったが,なんか幸せになってほしかった。自分の醜さと戦って,一度は負けてしまったが,彼には立ち上がるチャンスがグッドエンドにはあった。そしてそんな彼の醜さを受け入れ「汚くて,みじめなあなたが好きなのよ」と言ってくれた希美ちゃんも居たんだから,そうかんたんな話ではないんだけど,ただただ彼には幸せになってほしい。自分に酔って酔って吐いてシラフになったときに何が見えるんだろう。そんな彼のことをもう少し見たいと言う気持ちになった。ノーマルエンドで彼の結末を決めたのは希美ちゃんの殺害だったと思う。演技プランとして組み込まれていたのかもしれないが,終盤で渾身の演奏を披露した柚香さんに対してとか,自分のやってきたことを振り返る時の声の出し方が少し出会ったばかりのときのクワガタさんに戻る瞬間があって,とてもずんと来た。よくやるなって。声優もすごかった。だからこそ,どこまで行っても彼は自分から逃れられないし,それと向き合わなきゃいけなかったんだと思う。

 

佐々木柚香(ささきゆか)というメインヒロイン。

なんか彼女との会話やモノローグを見てると同郷の親友(兄弟?)の男や大学二年のときに知り合った1つ下の後輩の女の子を思い出す。なんかこう,アンビバレントな感情を持ち合わせているんだけど,表ではそれを出せない。出してもなかなかうまく伝えられない。それでも伝えようとする感じ。だから1つの現象に対してもたくさんの思いが浮かんできて,それには不吉なものもあったり。だけど彼女自身はそれを否定できない。そういった感情の渦巻きを抑えながらなんとなく地震前はやってきたけど,そうも言えなくなってきたときにノーマルエンドのあの過激なほどの切実な訴え。あの訴えの中に柚香さんの心が見えた気がしたけど,それでもまだ彼女はうまく説明しきれてはいなかったように思えた。それは自分の読み込みが足りないのかも知れないが,彼女はでも言える限りのことはスタッフロール前に言ったんじゃないかなって思う。その複雑さがやっぱり友人が言ってた「彼女は一番リアルだよ」っていう言葉にも通じてきた気がする。司への好きだけではない,憎悪にも似たような感情。だからこそ彼を落としたかったけど,彼であり続けなきゃダメかもしれないという思い。なんか俺もうまく説明できない。最初のエロシーンは司と彼女で,導入からしてすげぇ唐突じゃね?って思ったけど,彼女が受け入れた,そうさせたってことに関して,そのシーンがあったことについて,すべてを終えた今なら肌感覚でなんとなくそうなったのもわかる気がした。

 

雲雀やあろえや田能村。この三人はこのゲームの癒やしだった。

雲雀のあろえへの解釈はなんだかすごく美しく,そして率直だと感じたし,あの解釈はその手の勉強をしたり,仕事をしたり,関わりを持つ人は是非一回は読んでほしいと思った。最初は「病気のせいでやらされてること(あろえ碁石を並べたりばらばらになったものをもとに戻すという規則性を持った遊び)が,あろえにとって唯一の楽しみになっちゃってて,他の楽しいことを何も知らないんだとしたら,なんかそれは可哀想だよね」ってセリフがあって,あろえの状態を「病気」と見ていた。でもこの時点でもあろえの状態をちゃんと彼女なりに見れていた。そして,あろえの数々の行為はあろえの中の秩序を保つための行為だったということ,そしてそこに他人が介在しないだけであり,あろえは他の人と何も変わらないあろえにとってのそれが「普通」だったっていうことを後のセリフで述べる。こんなにもこの子のことをわかろうとした(言葉にして)人はなかなか居ないし,そういう人が居てほしいという自分の思いもあり,そういった数々のセリフでは俺は涙を流した。実は自分の弟も殆どあろえと同じくらいかそれ以上かの状態ではあるので,あろえの描写の1つ1つにも感動を覚えたし,雲雀の解釈にもとても感動を覚えた。

あろえもう,うん,なんか,言葉にしきれないなぁ。見ていて弟に近いものをとても感じたし,違うものもあった。プレ・スワンソングっていうスワンソングの前日譚でも姉と関わっている描写が描かれていたけれど,一番この作品で一貫してたのはあろえの存在だったと思う。形式上はヒロインなのかもしれないが,あろえあろえで居たこと,この物語がノーマルでもグッドでも司と柚香で終わったことは,とても大事だったのかもしれない。あろえあろえらしく,しっかり描いてくれたからこそ,そう終わったのかもしれない。

田能村は,ほんとにただの平和主義者でほんとにいいやつだった。彼の話を聞いてるとタバコが吸いたくなる。ほら,書いてる今だって吸ってますよ。それはさておき。彼の独白も結構好きで,一番震災前と震災後のギャップを俯瞰してたなぁと思う。彼は本作で一回も感情を乱さなかった。その理由は深いものがあるのかなと思ったけどそうでもなかった。彼には芯があったからかもしれない。意外と剣道のおかげだったのかもしれない。実は俺も剣道を6年ぐらいやってて,彼の独白はなんかすげぇ「わかるなぁ」って感じだった。剣士としてはたまにとてつもないミラクルを起こす(自分で言うな)クソ雑魚だったけど。俺は割とこういうゲームは各キャラに入り込んでやるタイプなのだが,なんだかんだ田能村が一番入り込めたかも知れない。それは俯瞰してる彼と同じように自分もゲームを通してみんなを見てるからだったかもしれない。

 

司は,割と典型的な主人公じゃないかな?と思ったり。結構重い過去を背負ってる主人公ばかり見ていたからかもしれないけど。「負けたら悔しいじゃないですか」みたいなセリフに彼のある種の素直さを感じたし,とても好感だった。ノーマルエンドで瀕死の状態で像を立たせる時は,彼の自己実現をそこに見た気がする。彼の独白を読んでる時には自分が大好きなエロゲのシークレットゲームの主人公「御剣総一」の独白をよんでいるようで,結構読みやすくてすんなり入ってきた。でも御剣とはちょっと違うなっていうところはもちろんあったよ。だけどエロゲの主人公として司ぐらい淡白なぐらいが読みやすいところもあったなと思った。万人が好きになれる主人公ではないかもしれないけど,結構好きだった。実際司自身にも軽度の精神的な障碍(作品中でこの呼称を使ってるからあえて使います)はあったかもしれないが,それはなんかあろえらとの交流で色々彼の中にも整理がついたんじゃないかなとは思ってる。そして彼自身が彼の中のずっと残ったつっかえみたいなものをどっちのエンドでも最後は受け入れたような気がする。あってもなくてもいいんだけども。

 

もう疲れたのでここでやめますが,なんかこのゲームは「あろえを障害者として書きながらそれを特別視しなかった」という点でもとても良かったなと思った。もちろんあろえに対して色々語る展開もあったけれど,それはあくまで「あろえ」という人間を語るために必要だったから(なぜならあろえ視点で話は書かれないから)。だけど,それはあろえのような人が当たり前にこの世に居て,それを「わかろうとする」意識って大事なんじゃないの?っていう気づかせ程度であって,でもそれっていわゆる健常者もやってるよね?ってその程度の話であって,,,っていう感じで。もちろんそういう含ませはあったかなって感じはした。だからあろえ視点は無かったんだろうし,あえて書かなかったんじゃないかなって思った。プレイヤーも一緒になってあろえを見てほしかったんだと思う。一応プレ・スワンソングにおける主軸はあろえとそのお姉さんだった訳だし。あと,ほんっとにあろえ草柳順子さんの演技が素晴らしかった。心の底からの素直さ,無垢さを俺は聴いたと思う。

はるか昔に草柳順子さんや雲雀役の榎津まおさんや妙子役の北都南さんが出演してたがっちゅみりみり放送局っていうすたじおみりすというエロゲメーカーが制作していた4年ぐらい続いたラジオがあって。パーソナリティがカンザキカナリさんと児玉さとみさん,そしてアシスタントで御苑生メイさんというエロゲ声優界のレジェンドたちが居たんですよ。

まぁ,どんなきっかけかは忘れたのですが,ちゅぱ音の練習する切り抜きを聴いて「エロゲ声優すげぇ」って思ってそのラジオシリーズを全部聴いたんですよ。ほんっとに大好きで。それももう中学時代の話なんですけど。でもそこで出てた声優さんたちの底力というか,持ち合わせてる魅力や強さをこの作品で存分出してくれたと思うし,それを聴けてすっげぇ嬉しかったし,スタッフ陣,シナリオライターもそうできるようにものすごく力を出したなって感じがした。そしてそれを俺に届けてくれて本当にありがとうって気持ちでいっぱいです。

 

このゲームは私にとって

 

   「ふとした時に思い出してしまうような忘れられない胸キュッ生きゲー」

 

になった気がします。胸キュンじゃないのがやっぱり大事ですよ。キュッってするんすよ。キュッって。そこはタイトルの「スワンソング」にもかかっていて。最後はどれも美しかったから,最後の最後まで私の心をキュッとさせたんでしょうね。

あとグッドエンドの妙子の「お兄ちゃーーーん!!」は北都南さんに言わせたかっただけなんじゃないか疑惑が俺の中で残ってます。北都南さんの妹キャラというか,「お兄ちゃん」にはそれだけの破壊力があるので。シークレットゲームに出てくる色条優希でかなりそれは味わったので。あ,興味があったらみなさんスワンソングもいいですけど,シークレットゲームも調べてみてください。エロゲーの話をこういう不特定多数の場面であまりしたことがなかったので,やっぱり思い出したら薦めたくなりました。

それはいいとして,本当にいいゲームやらせてもらいましたよ。ありがとう友人。今日のスケスト(怖い話配信)もよろしくね。

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